新潟大学大学院医歯学総合研究科 消化器内科学分野-旧内科学第三講座-

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免疫チームについて

消化器病学は大きな転換期を迎えており,ウイルス性肝炎が撲滅に向かう一方で,原発性胆汁性肝硬変(PBC)や炎症性腸疾患(IBD)などの自己免疫性疾患が今後も更に増加し,NAFLD/NASHなどの代謝性疾患とともに消化器病学の中心的な位置づけになると予測されます。免疫チームでは,消化器免疫の特殊性に着目し,各種消化器疾患における免疫病態について研究を続けています。マウスを中心とした動物実験に加えて,病態解明に直接的に繋がる可能性が高い臨床検体を用いた研究を中心として,以下のような各疾患における免疫病態の解明と,その制御による治療応用を目指した研究を継続しています。
①近年,自然免疫担細胞として従来のNK細胞,NKT細胞とは異なる自然リンパ球(Innate lymphoid cells: ILCs)の存在が明らかとなり,その機能解析が進められていますが,ILCsが豊富に存在する肝内免疫応答,特に各種肝疾患の病態への関与は十分に解明されていません。また,ILCsは消化管にも多く局在しており,消化管の炎症への関与も報告されつつあります。現在,各種NASHモデルマウスにおけるILCsとマクロファージの関与についての検討を行っており,臨床検体を用いたNASHなどの肝疾患やIBD症例での解析も予定しています。
②濾胞性ヘルパーT細胞(Follicular helper T (Tfh) cells)はCD4陽性T細胞サブセットの1種であり,B細胞の分化・誘導に重要です。近年,Tfh細胞の異常が高γ-グロブリン血症と自己抗体の出現を励起することで自己免疫疾患の主たる病態を担っている可能性とともに,間葉系幹細胞(MSC)移入による免疫抑制にはTfh細胞の抑制が重要であることが示されています。Tfh細胞には機能的に異なるいくつかのsubsetが存在しており,現在,自己免疫性肝炎とPBC症例について,末梢血と肝組織を用いて病態による差異などを検討しています。
③細胞間コミュニケーションツールとして複数の分子を運搬する細胞外小胞exosomeの存在が明らかとなり,注目されています。特にexosomeに含まれるmicroRNAは,様々な疾患の診断に有用なbiomarkerとしての重要性が報告されおり,その機能とともに解析が進められています。一方で,消化器病の領域の中で予後不良な癌である膵癌や胆管癌については,早期診断や腫瘍悪性度診断に有用なbiomarker開発が喫緊の課題です。当チームでは,より癌細胞由来のexosomeを解析しやすいと考えられる胆汁中のexosomeに着目し,その回収方法を確立するとともにexosomeに内包されたmicroRNAや免疫関連分子について,biomarkerとしての有用性や,癌微小環境や癌免疫に対する作用を中心に解析を続けています。
 あくまでも臨床の教室ですので,研究成果を臨床応用に繋げるような方向性であり,自己免疫性消化器疾患などに対する新規の免疫制御法開発を目指した研究を進めています。私共の研究にご興味を持たれた方は,リーダーの山際宛にいつでもご連絡下さい。

2015年12月25日
山際 訓

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